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まずは、
私の友人が、ファミレスで仲間たちとクダを巻いていた時の話。
最初は二人でメシを食っていたらしいのだが、それぞれが仲間を呼び、知らず知らずのうちに彼らは五、六人の団体となっていた。
その時友人は、とあることに気づいたのである。
その場にいた仲間内の、自分を除く全員がいわゆる『霊感のある』人間だということに、ふと気づいたのだ。
それを口にすると、早速おのおのが『霊』の話で盛り上がり始めたらしい。
そんな折、一人の仲間がこう言った。
「そういえばさぁ、『ホテルW』の前の交差点、いるよね」
「ホテル側の信号の下だろ?」
「あぁ、いるいる!!」
その時が初対面同士のメンバーもいたらしいのだが、彼らは皆、まるで示し合わせたかの如く、異口同音に『いる』と答えたという。
見えざるモノが“見える”連中には、それはほとんど常識のような話だったらしい。
ソレは横断歩道を渡るでもなく、いつ見てもその信号の下に佇んでいるのだ、と。
男性だと断言したヤツもいれば、黒い影が見えるだけで性別まではわからない、と答えたヤツもいた。
いずれにせよ、その交差点に『見えざるモノ』がいるということだけは、彼らの中では満場一致の決定事項であった。
しかしそれはいわゆる都市伝説のような知名度の高い話ではない(実際、私も知らなかった)。
ホテルWと言えば、市街地のほぼど真ん中に鎮座するそれなりに規模の大きなホテル。
昼間は言わずもがな、深夜でさえかなり交通量のある人口の密集地帯である。
国道と幹線道路がちょうどクロスするその大きな交差点の信号の下にいつも『幽霊』が立っているなど、我々一般市民にはにわかに信じがたい話。
「なんで幽霊のくせにそんな賑やかな所に立ってるの?」と首を傾げてしまうような場所なのだ。
我々には『見えざるモノ』…、
それを『見る』ことができる人間が確かに存在することを、友人はその時に痛感したという。
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