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私が大学に入りたての頃の話だ。
入学し、最初にできた友人は、その大学のある地域出身の同級生。
いわゆる地元民、というヤツである。
彼は、私のように遠方から来た同級生たちを相手に、よく観光地の案内人まがいのナビゲーションをしてくれた。
この道を通れば学校まで近いとか、あのショップは安いとか、あのラーメン屋は美味いとか…、などなど。
おかげで、私は慣れない街にも割とすんなりと馴染むことができたように思う。
ある日、彼と私はいつものように並んで自転車を走らせていた。
どこに向かっていたかはさすがに忘れたが、普段は通らない、少なくとも私自身は初めて通るような道路を、彼と私はその時、走っていたのだった。
「これが南高だぜ」
彼はそう言って、フェンスの向かい側にそびえ立つ校舎を指差した。
地域の名前に東西南北をくっつけた学校名はよくあるが、それもそのうちのひとつであった。
『○○南高校』
何の変哲もない、中規模の普通高校である。
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