第一話『窓ガラス』

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だがその、何の変哲もない校舎を指差して、友人はこう言ったのだ。 「おい、ミツ、あれ見えるか?」(ミツというのは大学時代の私のあだ名だ) 言われるがまま、私は友人の指先を辿る。 そこに、違和感はあった。 三階建ての校舎の、三階の一番隅の教室の窓ガラスの中に、一枚だけ、ガラスではなく木の板のようなものがサッシにはめ込まれていた。 それが遠目にはベニヤ板なのかもっとしっかりした材質のものかまでは判別できなかったが、いずれにせよ明らかに違和感がある。 なぜその一枚だけガラスではなく木の板なのか。 まさか学校の予算云々の話ではあるまい。 そしてその友人は私に、自転車に跨がったまま、その理由を聞かせてくれたのだ。
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