1 兆候

10/15
前へ
/120ページ
次へ
「精神病ってのは、隣の奥さんのお母さんの世代の話なんだって。ひどかったらしいわよー。糞尿たれながしで、四六時中うなってるから耳に残るんだってー」 「ふーん、それにしても、よくこんな家に来ようと思ったわね~、私だったら絶対にやめるわ」 「でも、今回の家族はどうなのよ。何かおかしいところある?」 「あるわよー! 旦那はろくに帰ってこないし、奥さんは金遣い荒いし……。一人息子だって暗くて無口で何考えてんのかわかんない……目つきだってあんなに悪いしさー、怖い怖い」 「……ねえねえ、あの子、帝応高校行ってるんでしょ? 本当にそんなに賢いの?」 「え? 帝応って皇族とかがよく行くとこじゃん。あそこ行ってんの?」 「そうそう。でも、この家すごいお金持ちでしょ? もしかしてさ……」 室内からの言葉が途切れると、クスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。 周平は気づくと眉間しわを寄せていた。 頭はフラフラで寒気もしたが、薬ももらわずその場から立ち去った。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加