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運転手は、しばらく後部座席にすわったばかりの周平の返事を待ったが、彼は口を開かず窓の外を見つめている。
運転手は笑顔のまま下唇を少し噛むと、前に向きなおりながら再び口を開いた。
「しかしまあ、家から50キロ以上も学校が離れてると移動だけで大変でしょう? もしよろしければ学校に直接送り迎えしますけど、どうしましょう?」
バックミラー越しに周平のようすを窺う。
「ほら、少しでも近い方が負担も減るでしょう。わざわざ学校から離れた店の駐車場まで移動しなくても――」
「ここでいいです」
口が開いたかもわからないようなわずかな動作で、周平はそう言い放った。
「い、いや、でも――」
「出してください」
それを聞いて、運転手からため息が出た。その顔から笑顔は消えていた。
苦い顔で前方を見つめ、慣れた動作で車を発進させる。
周平はぼんやりと窓の外を見つめ、運転手は黙々と運転する。
都内を軽快に進む車内は、きまずい空気につつまれていた。
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