1 兆候

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さきほどの豪勢な造りとは打って変わって、この周平の部屋は天井も低く、暗く、狭い部屋。もとは使用人の部屋だったと聞く。 もっと立派な部屋は腐るほどあったが、周平はあれこれ理由をつけてここを選んだ。 この部屋は一番人通りが少なく、誰にも会わずに屋敷に出入りが出来る。 もともと住む場所にこだわりなど持っていない周平には、この部屋が一番自分に合っているような気がした。 ただ、周りに生えている木の陰のせいか、常に肌寒いのが難点だ。 「ごほっ、ごほっ……」 ふいに咳が出て、口を手で押さえる。 (……風邪かな) 周平はここの所ずっと体調がすぐれず、風邪のような症状を長らくひきずっていた。 風邪薬は、ちょうど玄関ホールを挟んで反対側にある『使用人室』に行かないと無い。 周平はベッドに鞄を置くと、部屋を出た。 ______
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