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「すべての原因は……魔導機関だ」
「魔導機関って……なんでだ?
あれって、そんなに問題なのか?」
「……魔導機関、というよりは……魔灰が問題なんだ。
あれは、長い時間をかけて大地が大気から魔力を搾り取り、固めた魔力の塊。
それを使って動く魔導機関は、それらのほぼ九〇%以上をただの魔力として大気に放出してしまっている。
魔法自体が、そういうものだから仕方ないといえるけど…………変換効率が悪すぎるんだ」
「……待て、アルギムにも魔導機関は確かにあるが、それってそんなに多くないだろ?」
「そう。
アルギム国内の魔導機関から排出される魔力なら、まだこんな事態は数十年は起きなかったはずだ。
問題なのは……“他国で排出された”魔力が、原因不明だけどアルギムに“流れ込んで来る”ということなんだよ」
「……他国から、って……」
「クライシア、トールキン、それだけじゃない。
魔導機関で発展している小国それらすべての魔力が、何故かアルギムへと、流水のように集まってくるんだ」
「…………なんだよ、それ?」
ネイムは額に手を当てる。
「とにかく……このままではアルギムの大気中の魔力濃度が増加する一方だ。
そうなれば……」
「変異種が……もっと増えるってことか?」
「……その診断書を見れば、察しはついているでしょ?
“それだけ”じゃないって」
カリウスの言葉に、ネイムは歯を食い縛る。
認めたくないが……変異種とカイが同じ症状だということは……
「…………魔物だけでなく、人体にまで影響が出る」
「そう……たぶん、人を殺していなくてもこの土地にいるだけで魔物化を起こすようになるだろう」
カリウスは椅子に座り、とても疲れた様子で天井を仰ぎ見た。
「この世界から魔導機関が無くならない限り…………このアルギムは、人の住めない土地に変わるだろう」
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