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「どういうことだ!
あいつは、まだちゃんと生きてたはずだろ!
今は眠ったままでも、いつか目覚めるかもしれないって医者もいってたんだろ!」
「……そうかもね」
その瞬間、ネイムはカリウスの胸ぐらを掴んだ。
「お前……それを知ってて認めたのか?
あいつが死んだって、それを家族に認めさせたのか!」
「……殴りたいなら殴っても構わない。
その代わり、ちゃんとそれに全部目を通してくれ」
「っ…………ちっ」
ネイムはカリウスの胸ぐらから手を離し、ネイムは暖炉の前にドカッとあぐらをかいて座り込む。
そしてすぐさま手に持っていたカイの診断書と、そのほかの報告書にも目を通す。
「…………っ…………おい、これってどういうことだ?」
それらを見て、ネイムはカリウスの方へと振り返る。
「カイの奴と捕まえた変異種の体内で……同じ症状があった……?」
「……ああ、魔力神経が膨張し、腫瘍となった。
しかも問題なのは、この腫瘍は大気、地面、周囲のありとあらゆる魔力を吸収し、たくわえ、濃縮する。
……学者はこの腫瘍のことを“魔臓腑”となづけた。
本来は血流を流れる魔力が、こうして人間の臓器が司ることによって、これまで以上に効率的、かつ自由に魔力の運搬が可能になったとされている」
カリウスのその言葉に、ネイムは首を横に振る。
「そんなこと聞いてるんじゃない!
カイのアレは、宝剣が原因だったんだろ、なんでそれと同じことが魔物に起きるんだ!」
「……それはまだ調査中。
それに、一番伝えたいことはここからなんだ」
「……なんだ?」
「大気中の魔力が……時間が経つごとに加速度的に増加しているんだ」
「……大気中の魔力が……?」
「そう。しかもこの現象はアルギム国内のみで他国では観測されていない。
この現象によって、アルギム国内の魔物が凶暴化、及び……変異種への突然変異を促す魔力異常を起こしたと考えられている。
どうしてこの現象がアルギムだけなのか、どういうメカニズムで魔物がさらに変異種へと変わるのか……まだ何もわかっていないけど……一つだけ確実に言えることがある」
カリウスは、ゆっくりと、そして重々しく真実を告げる。
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