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「おじいちゃん……噂ってなに?」
「アルギムで……竜騎士の養育を開始し、リンドブルムの幼体を騎士見習いに預けてとな」
老人はネイムとサクラの方を交互に見ている。
「預かったんじゃなくて拾ったんだけどな」
苦笑しながらそう答えるネイム
「アンタ……そんなに凄い人だったの?」
少女も老人の言葉を聞いて驚き、畏怖の情念を込めた目でネイムを見る。
「竜を飼ってるから凄いわけじゃないだろ?
まだ実績出してないんだから、ただの人だよ、俺は」
「うむ……しかし、飛竜の中でもリンドブルムは強者……成体を殺せる程の者にしか従わないという珍しい習性があるのだがなぁ」
サクラを見てから、老人はネイムのことを不思議そうに見る。
「おい、お前……なんて名じゃ?」
「ネイム・レス
れっきとした本名だからな」
「ふむ……ネイムとな。
ワシはアルガドじゃ。
アル爺と、ここいらじゃ呼ばれとる」
老人――アル爺はそう自己紹介するが、ネイムは特にリアクションはしなかった。
「ふーん……まぁ、そんなことは良いからさ、こいつが勝手に火を吐かなくさせるような道具をくれよ。
いつまでも鎖じゃサクラがストレス溜まっちまう」
「………フシュー………」
鎖の隙間からサクラはイラついた様子で息を吐く。
ネイムの命令だから仕方なく大人しくしているが、そろそろ我慢の限界になりそうだ。
「ふむ……ちなみに、所持金はいくらだ?」
「【メル】でもいいか?」
「ここはトールキンじゃぞ。【ディル】で払わんか」
【メル】はアルギムの通貨で、トールキンでは【ディル】という通貨が一般的だ。
因みに今の為替では
1ディル=約15メル
というレートになっている。
「えー……困ったな。ディルの持ち合わせは支給されてないんだが……」
ネイムは財布の中身を見てそう呟く。
一応【ディル】をアルカから立て替えてもらっているが、正規の店での買い物ならメルも使えると聞いていたのでメルの方を多く持ち歩いていた。
「じゃあ、私が支払うから、ネイムが私にメルを渡すってことでいい?」
財布とにらめっこをしていたネイムに、少女がそんな提案をしてきた。
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