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ネイムはその箱を見て一瞬渋い顔を見せた。
「アル爺さん、在庫処分しようとしてないだろうな?」
ネイムのその言葉にアル爺は鼻で笑い返してやった。
「バッキャロー、これはな、かつてリンドブルムを駆ることを想定して作られた特注品じゃ。
出すとこ出せば、一生遊んで暮らせる価値のもんじゃぞ」
アル爺のその言葉にエリーは大きく目を見開いた。
「えっ……おじいちゃん、それ……」
「気にすんな嬢ちゃん。
ずっとこうして埃被せておくより、使ってもらった方がこいつも喜ぶさ」
そう言って、アル爺は箱を開く。
「……これは」
ネイムは箱の中を覗き込んでそこにある物を確かめる。
「手に取って確かめてみな」
アル爺にそう勧められ、ネイムは箱の中にあったそれに手を伸ばす。
「……手綱か?
にしても……不思議な模様だな」
「ただの手綱じゃねぇぞ。
そいつはトールキン屈指の技術者が丹精込めて作り上げたものでな、絶対に切れることも無く、しかも主と飛竜の意思を繋ぐもんだ」
「飛竜の意思を繋ぐ…………よくわからんが、これでこいつが勝手に火を吐かなくなるのか?」
ネイムとしては、口を塞ぐ道具が欲しかったのだが、どう見てもこの手綱ではそれは望めそうにない。
「ネイム、それはおめぇがちゃんとそいつに慕われていたらの話じゃ」
「……なんか引っかかる言い方だな。
まぁ良いけどよ。試着してもいいか?」
「おう」
アル爺の許可を貰い、ネイムは頭の上に載せていたサクラを下ろして鎖を外し、素早く手にある手綱をサクラに着けてやった。
「…………ピィ?」
「お、機嫌が直った」
先ほどまでイライラしていたサクラだが、鎖が外れたからか、急に普段通りに戻った。
「おいネイム、手綱を握ったまま、そこの壁に向かって火を吐けって口に出さずに念じてみろ」
「え? ……まぁいいけど」
アル爺に言われるまま、ネイムは誰も人のいないただの壁を見て、手綱を握ったままサクラに火を吐け、と念じてみる。
「ピ?」
すると、サクラはネイムが見ている方向に首を向け、次の瞬間
「――フカーーーー!!」
大きく口を開き、サイレントを追い払った時と同様に火を吐きだしたのだ。
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