出張&護衛

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――――― 要人の屋敷 ――――― 「……おい、そんなので本当に大丈夫なのか?」 サクラの口に付けられた拘束性皆無の手綱を見て、シオンがそんなことをネイムに訊ねた。 「大丈夫だって。 これでサクラは俺が命じない限りは勝手に火を吐かない。なっ?」 「ピフっ」 ネイムの言葉に同意するように頷くサクラ 「なんか……犬につけるリードみたいね」 手綱を握るネイムとそれに繋がれているサクラの構図を見てマリアはそんなことを呟いた。 「自然な感じはすると言えば……するね」 微笑ましくネイムとサクラを見るマルタ 三人と無事に合流し、ネイム達は要人がいるという屋敷にやって来た。 今は近衛騎士団の四人が要人とその使用人たちと会って話し合っている。 それまでの間はネイム達は別室で待機を命じられているのだ。 「ていうか……いくら言う事聞くからってよく依頼人がサクラを屋敷にいれることを許可したわよね」 マリアは部屋の中の調度品を見ながらそんなことを呟いた。 客間の人であろうこの部屋、見た限りかなり高価な絵画や壺などが飾ってある。 「確かに……この屋敷の外観見た時はいくら魔物に寛容なトールキンでも入れないかと思ったぜ。 シオン、貴族のお前から見て……この屋敷の主ってどんな人だと思う?」 「ふん……能無しめ、それくらいもわからないのか。 ……少なくともこの部屋にある物はすべて本物だ。トールキンの貴族だとしたらかなりの名家だろう」 枕詞の様にネイムの事を貶める発言を入れたが、シオンはちゃんとその質問に答えてくれた。 「となると……もしかしたら俺の悪い予感が当たったかもな」 「悪い予感って?」 マルタのその質問はシオンもマリアも持っていたのか、その視線が一様にネイムに集まった。 「駅でも言ったが、この護衛をアルギム近衛騎士団が受けることは異常だ。 そして内容はトールキンの要人をアルギムに連れ出す。 ……つまり、一ヶ月後に行われるアルギム国王戴冠式に合わせていると考えるのが自然じゃないか? トールキン人にもかかわらずで戴冠式に参加するってことは、要人は周辺国に自身の存在を認知したいと」 ネイムの雄弁な語りに勢いが乗ろうとしたとき、部屋の扉が開いた。 「はいはーい、アルカさんが来ったよー」 「……駅でもそうだが、狙ってないか?」 話しの途中で入って来たアルカを非難がましく見るネイム
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