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ガタガタと、馬が引く大きな馬車の車輪が音を立てていた。
そんな音とは反比例に馬車の中は揺れが少なく快適な空間が保たれていた。
「さっすがは皇女専用馬車……サスペンション半端ねェ」
「ピィ~」
ネイムとサクラは振り分けられた席で横になりながら完全にリラックスした様子だ。
「何ていうか……ネイム、貴方っていつもそうなの?」
この馬車の主である少女
――トールキン第一皇女
エクリーヌ・E・トールキンがそんなネイムを呆れた様子で見ていた。
「そうって?」
「基本上から目線じゃない。
自分の身分とか抜きにして」
「んー……俺って五歳まで周囲を下に見て生活して、そこから十年は人が誰もいない場所で修行してたから人との接し方はこれ以外には知らん」
「それは……壮絶な幼少期ね」
「そうか?
まぁ俺の話はいいけどさ……」
ネイムは寝転がっていた身体を起こして馬車の中を見回した。
「お前ら、何ガチガチになってんの?」
その言葉に、背筋をまっすぐにして座っていたシオンがネイムを射殺すような眼光で睨む。
「……お前、いくらなんでも……馴れ馴れしいにも程があるぞ……!」
「だって俺らの任務って基本的にはエリーの話し相手だよな? なぁ?」
同意を求めるように軽く話しかけるネイムに、エリーは若干苦笑を浮かべた。
「まぁ、そうね。
ネイムみたいにリラックス……ってほど行かれても困るけど、もう少し肩の力抜いてちょうだい」
「は、はい……」
「マリアにマルタも、女子同士よくいうガールズトークなる物を展開して見せろよ」
「え!?」
「い、いきなりそんなこと言われても……!」
ネイムから話を振られて緊張していたマリアとマルタはアタフタと慌てだす。
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