支配された世界

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現在16歳 現役高校一年生の橋本 竜はとある株式会社のほこりまみれの床をほうきではいている。 マスクをしても隙間から小さな小さなほこりが入ってきそうな、とりあえず胸元あたりまではほこりはたってきている。 彼は清掃関係のバイトをしている。 それも平日の午前中に。 学校をサボっているわけではない。 これが義務なのだから。 新・日本の党が制定した法令には以下のように書かれている。 『齢が十二を超えるのものに関して自給自足を強いるものとする。』 つまり"働け"といっているのだ。 しかもついでなのか、あとには親は子を支援してはならないとまで書いてある。 支援した場合は罰金または禁固が言い渡されるという始末。 この法令が施行されたのは橋本が14のとき。 反抗期真っ盛りのときだ。 橋本ははじめは喜んだ。 働くことを理由に学校を休んでもいいということになったからだ。 しかし生きていくことの辛さをすぐに知 ることになる。 3日で食べていくことにこまり、 一週間で着る衣服にこまり、一ヶ月で生活費を賄えず、半年で授業料未払いで学校にすら通えなくなりそうにもなった。 もちろん支援が禁止されているのだから、親との同居も禁止。 初めは反抗期だった彼も時間がたつにつれ実家が恋しくなった。 たまにかける電話で親子の絆を感じとり、安定とした収入とはいえないまでもお金をてにいれ、工面して、ここまできた。 働く辛さを知った彼だが、実際なにかが変わったかと問われればなにもかわっていなかった。 ただなぜ働かなければいけないのか、なぜ自給自足しなければならないのか、 自立できない自分に歯がゆさを感じながら、心中でわがままを言っていた。 しかし、働かなければ自分は死ぬ。 集めたほこりの塊をてもとのちりとりでまとめてとり、この場所での仕事を終えた。 そう言い聞かせて彼はまた働きに職場へ戻る。
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