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小さな頃から、「おまえは馬鹿だ」と言われて育ってきた。
父は町工場で働くどこにでもいるおじさんで、母は近所の総菜屋でパートをしているどこにでもいるおばさんだった。
そんな父母の血を受け継いで、私もまたどこにでもいる、普通よりちょっと容姿の劣っている女の子だった。
顔はいまひとつだったけど、人より鈍感な性格のためかいつもニコニコと笑っているので人から嫌われたり仲間はずれにされたりすることなくこれまでを過ごしてきた。
ただ、家に帰ると”ニコニコ笑っている女の子”は”いつもヘラヘラ笑っているだけの愚鈍な娘”に取って代わる。
父と母の仲は決して良いわけではなく、家で大きな喧嘩をすることはなかったけれど代わりにどこの家でもあるような賑やかな家族団欒というのも体験したことがなかった。
それでも小学校高学年になるくらいまでは時おり畳が軋む音とともに母が声を殺しながら喘ぐ声が隣の部屋から聞こえてきたこともあった。
そんな日の翌朝は心なしか母の機嫌が良かったような気がする。
私が中学を卒業すると同時に二人はあっけなく離婚した。
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