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行くあてもなくフラフラと歩いていたら知らぬ間に、彼が住んでいたアパートの扉の前に立っていた。
ぼんやりと立ち尽くしていると、「なにか用?」
と、30を少し過ぎたくらいの冴えない男が怪訝な表情でこちらを窺っていた。
男は彼の住んでいた部屋の新しい住人だった。
「前にここに住んでいた男に突然逃げられた」と話すと「とりあえずあがれば」と言われ、そして親身になって話を聞いてくれた。
そしてそのまま「した」。
「行くところがない」ことを言ったら「ここに住んでもいいよ」と言われた。
部屋の中にはもう新しい家具や生活用品が入っていたけれど、まだかすかに彼の気配を感じられるその部屋に、私は住むことにした。
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