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「浴衣!すげぇー似合ってたぜ!お前ら!!」
そう言い残し、赤城はもう1度だけ手を振って長い塀の角を曲がって行った。
その後ろ姿を見送り、門の前に立ち尽くしたままの瑠美。
「お前ら…か。」
なんとなく姿が見えなくなった塀の角から、いつまでも目が離せない。
喉の奥の方がキューッと締め付けられ、気付けば大きな瞳に自然と涙が溜まっていた。
その涙で視界が歪む。
「…………なんで…私だけ見てよ。」
艶々とした瑠美の頬を、一筋の涙がつたっていく。
月夜に照らされキラキラ輝く涙を、瑠美は浴衣の袖で静かに拭い
「さてと…笑顔!笑顔!」
パンパンと顔を叩いて、大きな門へと姿を消した。
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