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2013年10月18日午前08時00分
事件発生3時間前。
ガチャ。
「いってきます。」
開いた扉の隙間から冷たい風が入り込んでくる。
ここ数日で秋も随分と深まってきた。
特に朝夕になれば半袖では心細いほど冷え込んでくる。
「あなた、なんだか疲れてない?」
玄関先で見送りにきた嫁の雪子が不意に話しかけてきた。
いつもとは違うシナリオに俺は手を止めた。
「なんだ、心配してくれてるのか。」
「あたりまえじゃない!最近帰りも遅いし、もしかしてまだ…。」
「心配するな、今は少し忙しいだけだから。」
「そう。それならいいんだけど…。」
どうやら雪子にはすべて見透かされているようだ。
俺が今追ってる事件の事も。
そのせいであまり眠れていない事も。
疲れてる、か…。
やはり強がっても所詮は人間なのだな。
「それより、そろそろ雪乃を起こした方がいいんじゃないか?」
「あ、そうね…。いってらっしゃい、気を付けてね。」
雪子はそういって俺の右肩にそっと手を添えた。
「ああ、ありがとう。」
俺は雪子の手をスルスルとほどき、そのまま家を出た。
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