梶原 誠治

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刑事局捜査第一課に移動してはや四年半、もうすっかりとこの殺風景な事務所にもなれたものだ。 おれはここで特殊事件捜査官として働いている。 主に立てこもり事件やバスジャック犯などの特殊な事件を担当していて、それと同時に影で立証不可能な奇怪事件も追っている。 例えばそのうちのひとつであり、俺が個人的に最も力をいれている事件、港区殺人事件がある。 表向きはただの刺殺事件と称しているが、真相は全くの偽りだ。 俺が現場に駆けつけた時、死体は全くの無傷。 ただ、その後鑑識の結果からなんとも不可思議な事象が発覚した。 被害者の体内から無数のナイフが検出されたのだ。 しかし外傷は全くの無傷。 これほど頭を抱えた事件は今までなかった。 どうしても解らないのだ。 どのような方法で外傷を加えずに体内にナイフを突き刺したのか。 それもその数十八本。 普通に考えると不可能だ。 そう、普通に考えるとだ。 そこで俺はある仮説を立てた。 なんらかの特殊能力を持った人物が何処かに存在していて、その能力を駆使して体内にナイフを突き刺した。 馬鹿げた発想だが、そう考えるほかなかった。 根拠もなければ、証拠もない。 ただ、どんな事件にもその裏には何時だって真相がつきまとっている事を俺は知っている。 真相を暴く為なら俺はどんなに馬鹿げた事でも、たとえそれが限りなく0に近い可能性でも追い求める。 それが俺の、いや、刑事としての最大の義務であると、そう思っているから。
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