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科学者達の後を着いていくと、白い部屋に通された。まるで「保健室」のような外観だ。きいっ、と音をさせながら、椅子に座っていた女がこちらを見上げる。
「初めまして。イエソド―マルクト君」
「……なんだそれは?」
「イエソド―マルクト。君の名前よ。気に入らないない?」
「そんな仰々しい名前、嫌だね」
頭をぼりぼりと掻くと、女はふいに腹を抱えて笑い始めた。失礼な奴だな。人……いや、AIか。AIを見て笑うなんて。
「いや、ごめん。せっかく初めて成功したAIに、ばっさり切られるなんてね。お上さんも可哀想にねぇ」
可哀想と言っている割にはどこか楽しんでいるようだ。
「まあ、いいわ。そのうち、嫌でも違う名前になるんだから、それまですこし我慢してちょうだい。申し遅れたわね。私はテュケー社の科学者、佐々木夢子。よろしくね。イエソド―マルクト君」
手を差し出されて困惑するが、仕方なく握手をする。
これもテストなのだろうか。首をかしげると、夢子はうふふと奇妙に笑った。
「イエソド……何とかって、どうでもいいよ。俺は何をすればいいんだ?」
「あら、まあ……。ずいぶんとせっかちさんね。まあ、いいわ。こっちにいらっしゃい」
カーテンをあけると、そこにはごちゃごちゃとしたコードが這いずり回っている機械が置かれていた。
どうにも、この景観とはそぐわない。
「これは、アテュ用のテストマシン。タウに乗り込む前に、これでテストをするのよ。じゃ、こっちに乗って」
人一人入れるだけの車のようなそれに乗り込むと、目の前にデイスプレイがこちらを向いていた。
コードが絡みつくゴーグルを掛け、下にある突起を握る。
「……!」
すると、そこには夜空が横たわるように存在していた。
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