第零章

7/7
前へ
/7ページ
次へ
次々と拡散されてゆくエイに似た敵を、あるいは手のひらから突出している棘のようなもので串刺しにし、あるいはその棘でなぎ倒して踏みつけたり、タウの後頭部に三基ある砲撃機で砲撃する。 第三、第四、題五、第六、第七―― 機械的にカウントする声が耳朶を撫で、そして通り過ぎてゆく。 すべてをなぎ倒したときには、第十段階を過ぎていた。 「これですべてのテストを終了します。お疲れ様でした」 機械がそれだけ素っ気無く言うと、ばしゅ、と空気が漏れる音が聞こえて、ゴーグルが外され、体を覆っていたコードもすべて外れた。 「ふう」 「お疲れ様!すごいじゃない、イエソド。まったくの無傷よ」 「そういう風に造られたからだろ?」 短い黒髪をゆっくりと振って、ため息を吐き出す。夢子はどこか面白くなさそうに、腰に手を当てた。 「そんな、ロマンのないことを言わないの。今日はこれでテストは終わり」 「それで?俺はどうすればいいんだ」 「学校への編入よ」 イエソドは、聞き間違えたのだろうかと思ったが、夢子はもう一度「学校への編入」と一字一句、丁寧に言った。 「学校、って俺は、そんなの」 「確かに必要ないかもだけどね、情緒教育として組み込まれたのよ」 「はぁ?」 AIに情緒教育も何もないのではないのか?元から完成しているアテュに、そんなものが必要なのか? 疑問が生じているにも関わらず、夢子が一枚の書類を渡してきた。 「私立東奥高等学校……。何だよ、これ」 「ちなみに、学年は二年生」 2、と指で示すと、夢子は白衣のポケットに手を突っ込みながら、がんばってねぇ、と間延びした声色で笑った。 人事だからと言って、ちょっとひどすぎやしないか。 部屋から追い出されて、ぶつぶつと文句を言いながら、自分に宛がわれた部屋へと歩く。 山を削り取ってそびえるこの建物は、タウたちを人目からできるだけ遠ざけるようにと出来ているが、たぶん日本にいる人間ならだれもがここに戦闘兵器があるということくらい知っているだろう。 「あ?」 部屋はただただ真っ白だった。それは予想していたものだったが、ベッドの横に人がういていた。厳密に言えば、小さな人型が、ちいさな金属の上で浮いている。 短い髪は銀色で、ぴったりとしたスキンスーツのようなものに覆われていて、腕をくんでこちらを見上げていた。 「誰?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加