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その日、彼はいつものように広電を待っていた。
肩の鞄を時折持ち直しながら、ウォークマンで曲を聴きつつ駅に立つ数分、いつもの時間、いつもの日常。
時間通りに到着した緑色を基調とした四角い電車、グリーンムーバーに乗り込み、慣れた手つきで入り口左右に備え付けられたカードリーダーにパスピーをかざす。
リーダーに表示された数字で残金があまりないことが分かるが、定期券であるため彼はそのまま気にせずに一両目へ、つり革を握る。
彼の身体が軽く揺れ、電車が動き始める。
彼は流れる景色を眺めながら、今日は何があったっけ? と今日の予定を思い返す。
――あ~、そういや“アレ”があったな。
アレはどうしても小銭が必要になってくる。
向こうの両替機は時折故障しているため、どこかで両替しなければ。
彼が立っているのは一両目、一番前のつり革の場所。
彼の後ろにあるのは、パスピーのチャージと支払い、そして両替機を兼ねた機械。
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