いつかの疑問

3/11
前へ
/11ページ
次へ
 その日、彼はいつものように広電を待っていた。  肩の鞄を時折持ち直しながら、ウォークマンで曲を聴きつつ駅に立つ数分、いつもの時間、いつもの日常。  時間通りに到着した緑色を基調とした四角い電車、グリーンムーバーに乗り込み、慣れた手つきで入り口左右に備え付けられたカードリーダーにパスピーをかざす。  リーダーに表示された数字で残金があまりないことが分かるが、定期券であるため彼はそのまま気にせずに一両目へ、つり革を握る。  彼の身体が軽く揺れ、電車が動き始める。  彼は流れる景色を眺めながら、今日は何があったっけ? と今日の予定を思い返す。 ――あ~、そういや“アレ”があったな。  アレはどうしても小銭が必要になってくる。  向こうの両替機は時折故障しているため、どこかで両替しなければ。  彼が立っているのは一両目、一番前のつり革の場所。  彼の後ろにあるのは、パスピーのチャージと支払い、そして両替機を兼ねた機械。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加