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――丁度良い所に両替機があるじゃないか。
彼は鞄から財布を取り出すと、そこから五百円を取り出して機械の硬貨投入口へ落とす。
五百円玉が落ちると共に機械が唸り、下のカップのような部分に小銭が吐き出される。
彼は何気なく出てきたそれらを掴んで、違和感を感じた。
五百円を両替した場合、普通は百円玉が五枚なければならない。そのはずなのに、なぜ自分の手には十枚の硬貨の感触があるのか…。
彼は恐る恐る手を開く。
彼の手の中には、銀色の硬貨五枚、ではなく銀色の硬貨五枚と銅の硬貨五枚が入っていた。
――なんで五十円玉一枚と十円玉五枚!?
生まれて十数年のなかで、こんな中途半端な両替をされたのは初めてで、彼は何度か自分の手の中を見直した。
だが、いくら見直したところで五十円と十円がくっついて百円玉に変わる、なんてことはあり得るはずがなく、彼は思わず顔に手を当てた。
百円玉でなかったからと言ってなにか言われるわけではないのだが、それでも百円玉だった方が都合がよかった。
友人に百円玉と両替してもらおうか、などと呟きながら両替機の前で悩む姿は、一人のサラリーマンがわざと咳き込むまで続いたのであった。
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