南班。

5/12
前へ
/165ページ
次へ
「やば。見つかった。」 早乙女さんも真剣に始めた片付けは南主任の声で遮られた。 見つからないわけないでしょう…。 「なんで水たまり?なんで濡れてんの?」 あたり一面には水たまりが形をなしていた。 「タバコ落としたら火ついちゃって」 早乙女さんが申し訳なさそうに一杯になったゴミ袋の口を絞った。 「風邪ひくだろうが。ほら。早くシャワールームいけ。」 私の手からゴミ袋をひったくって、南主任は私たちを追い出した。 カメラがなかったことだけが救いだったのかも。 ポタポタと廊下に垂れる水を払うように、早乙女さんをおいて私はオフィスに戻った。 「ええ!どーしたんすか?」 「なんでもないです。ちょっとシャワールーム行ってきます。」 「あ、はい。」 南 と書かれた鍵をとって、ノロノロと戻ってきた早乙女さんの腕を引っ張ってシャワールームにいった。 一日目で失敗を侵した自分に悔しさを感じながら、洗い流すようにしっかり体をこすった。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加