南班。

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「どうした?」 ドアノブに手をかけて動かない私に、南さんから声が降ってくる。 「い、いえ。」 「俺を誰だと思っている。」 振り向けば自信で満ち溢れた南さん。 「負けるわけない。」 「………でも。」 「だからそんな顔するな。」 私の方に手をおいて、部屋をでた南さんになにか…強い何かをもらった。 「資料をぐたさい。」 「資料ね?」 渡されたのは茶封筒10枚にまんぱんの資料。 抱えて戻った部屋にはまだ誰もいなくて、持って来た資料を見やすい様に種類別に並べて部屋をでた。 「あ。おかえりなさい。」 「んー。」 パソコンから離れない目は真剣そのものを物語っていた。 「珈琲です。」 「あら。ありがとう。」 いろいろと書かれたガラスボードを消しす、私の横を通る三越さん。 「んと……資料をあれ?」 「どうしたの?」 さっきまで見向きもしなかった早乙女さんとやっと目があった。 「これ誰がやったの?」 これとは、わたしが並べた資料。 「わ、私です。」 各班でやり方は違う。 また失敗した。と目をぎゅっとつむると、思いも寄らない言葉が聞こえた。 「やば!!」 「なにこれ…めっちゃ見つけやすい。」 早乙女さんもいつの間にか資料の前に立っていた。 「うちら皆大雑把だからこんなのやるひといなかったっすよね!?」 「あらごめんなさい?女なのに大雑把で。」 「いで!」 巫山戯ていたのも直ぐに終わり二人は資料を持ってまたパソコンに向かい始めた。 キュッとペンのこすれる音だけが響く部屋に、慌てた南さんが入って来た。 「やばいぞ。」 「どーしたの?」 珈琲に口をつける早乙女さんをちらっと見た南さんは私たちを順に見てゆっくり口を開けた。 「撮影所がない。」 「え!?アトリエが!」 「水浸しだ。今から間に合うか?」 「お、俺電話して見ます!」
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