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見向きもしなかったセットの横の扉を開けると、綺麗な小道具が所狭しと並べてあった。
「これが…不器用な人ができることかな。」
小道具の奥に丸められたたくさんの残ったポスターは、まだ綺麗だった。
「あ!優子ちゃん!」
南班の扉を開けると、皆が心配した顔でこっちを見ていた。
「どこいってたの!?」
「えっと…」
「麻琴。いい、先にミーティングだ。」
「モデルはどうだ?」
「私の印象ですがこの広告には香織というモデルが最適と感じたので、依頼したところさっきOKもらいました!」
早乙女さんと三越さんの嬉しそうな顔が雰囲気を和らげる。
「他のチームですが…~~~」
ミサキさんが手帳と集めた資料を広げた。
南さんが立ち上がってガラスボードに振り向く。
「あれ……」
そこに書かれているのは、私の字。
「これ…」
「わ、私です。あ、もし必要だったらと思って、パソコンでメモ書きは残してあります!」
「…………すげえな。」
三越さんがポツリとつぶやいた言葉が脳みそに焼きつく。
「お前、字が綺麗だな。」
南さんの嬉しそうな顔を見るのはこれが始めてだった。
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