繋がれし者の春

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繋がれし者の春

透明な真空を 鎖に繋がれた悲嘆は見上げる 散った星の全ての名は語れずとも 手負いの大地を無力な手で掬いながら 見下ろすだけの真空に 疲労を沈着させた眼差しを向ける 御祓の雪が流れた跡に 生まれるものが何物であろうとも 戻らぬ時の面影を視せる 汚れた廃墟の凍えた瓦礫 透明な真空はどれだけ美しくとも 其処に命は存在しない 繋がれた者の願いを知りつつ 風は罪無き春を喚ぶ――
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