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しばらくして、泣き声が聞こえなくなった
ふと隣をみると、びしょびしょになった上着を脱いで立ち上がろうとしたそいつ
けれど、弱りきったそいつは立ち上がることができずにその場に崩れ落ちた
立っては倒れ、立っては倒れを繰り返す
俺はみていられなくなって気がつけばそいつに手を延ばしていた
『お前無理すんな。今の状態じゃ無理やろ。』
手を引くと力なくその場に座り込んだ
『お前名前なんていうん?』
ふるふると首を振るそいつ
いや、イヤイヤちゃうやろ
けど、泣きながら首を振るそいつ
なんかちょっとムカついて、俺はそいつの制服の胸ポケットにある生徒手帳に手を伸ばした
するとそいつはか細い声で
『…あっ』
と一言だけいうと、諦めたのかまたうつむいた
安田章大
こいつが今までどれだけ傷つけられてきたかがわかってしまうほど残酷な文字が並ぶボロボロのそれにはそう記してあった
こいつと同じく今にも消えてしまいそうなインクで…
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