◇ 樋口と舞子のおまけ話

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「洗濯物はこれだけ?」 舞子は病室のベッドで寝ている樋口に、洗濯物を入れたスーパーの袋を見せて訊いた。 樋口は頷いた。 「今日はそれだけ」 樋口は平塚に襲われて救急病院に搬送され、緊急手術を受けた。 その際に医師から説明を受け、同意書にサインしたのは、警察の連絡で駆けつけた樋口の両親だった。 舞子に知らせたのは樋口自身からだった。 舞子はあの日帰らぬ樋口を待っていたが、先に寝てしまった。 朝起きても樋口はいなくて、でも仕事で徹夜することはざらなので、「今日は何時に帰るの?」というメールを樋口へ送り、仕事に行った。 その夜帰宅してもまだ樋口は帰っていなくて、電話もつながらず、メールの返信もなくて、舞子は別れるために自分の前からいなくなったのかと思った。 「それならちゃんと言えばいいのに」 信じる気持ちが半分。 疑う気持ちが半分。 それらがせめぎあい、涙がちょっとだけ出た。 数日後樋口が何者かに襲われて入院していたと知らされたときは、それはそれで驚いた。 駆けつけた病院で、全ては自分のいないところで終わっていたと知ったとき、これが同棲のデメリットなのかと衝撃を受けた。 普段は楽しいだけで何も考えないでよい生活。 問題が発生して、その時に自分たちの関係が砂上の楼閣であったと認識するのだ。
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