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「あなたはだぁれ?」
「僕は、ずっと君のそばにいたんだよ」
「知ってる。でもどうしても、思い出せないの」
「そうだろうね」
少女は自分の周りを見渡した。静かな部屋 だった。白いソファに白いテーブル。白い床に 白い壁。ずっと見ていると、白の境がわからなくなるようだった。それから、甘い甘い匂い。
「この匂いはなに?」
少女がそう聞くと、こーたは嬉しそうな顔をして部屋から出た。そうだ。あの人はこーたっていうんだった。戻ってきたこーたの腕には、 抱えきれないほどのお菓子があった。それをドサッと床に置き、また部屋から出た。そんなことを何回か繰り返すと、お菓子の山はこーたよ りも大きくなった。
「すごい!まだあるの?」
「まだまだあるよ。全部ミカのだ」
少女はハッとした。そうだ。私はミカっていうんだった。
「どうしよう。太っちゃう」
ミカは感嘆のため息を吐いた。こーたが近付いて来て、ミカに目線を合わせる。
「どんな君でもいいんだ。だからずっと、ここにいて?大好きだよ」
こーたは言った。声が震えていた。
「こーたは悲しいの?寂しいの?」
ミカはこーたの頬に触れた。こーたは泣いて いた。
「ありがとう。名前を呼んでくれて」
ずっとここにいるよ。ミカはその言葉を飲み込んでしまった。もちろん、いつまでもここにいられない、という漠然とした予感も。ミカはただ、こーたの頭を抱いて撫でた。
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