* episode03 *

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コンコンッ 「失礼します、陸上部の未来ですけど…」 「おー、来たか」 部室で制服に着替え、先輩たちに挨拶を済まし、教官室へ。 中には伊勢谷しかいなかった。 そのせいか、とても静かで、何だか居心地が悪い。 「もう、ほかの先生方はいないんですか?」 なんとなく無言が嫌で話しかけてみる。 「席を外してもらった。ほかの先生がいると話しにくいと思ってな…」 思っていたのと違う返答に、私はえ、と固まってしまう。 「未来、おまえのことについて少し調べさせてもらった。」 「ーーっえ」 調べ、る…? 「おまえ、中3最後の大会、棄権したよな?あのとき、俺もあの会場にいてな。おまえ結構注目されてたし、棄権したって聞いて気になってたんだ。 名の知れた高校ならまだしも、うちみたいな弱小に来るなんて驚いたよ。」 あの大会… 思い出しただけで、足が震える… 「実はおまえの中学の顧問の先生、俺の知り合いでな。この間、連絡して……、未来?」 途中から、話を聞いていなかった。 いや、聞けなくなっていた。 中学は、私の“ひみつごと”であふれている。 それを知られてしまったら、ここにはいられない。 そんなことになったら、私は…っ 「おい、未来!」 もう私に、伊勢谷の声は届いていなかった。 次第に音が遠くなり、視界が端から黒くなり、狭くなっていく。 手足の先の感覚がなくなり、立っていることもできなくなった私は、その場にしゃがみ込むように意識を失った。
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