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それから私は公園へは行かなくなった。母を心配させたくない思いもあったが、なぜだかあの公園へ行きたいという気にはならなかったのだ。
そして、月日は流れ、私は中学生になった。
今ではたくさん友達もいて、毎日楽しい日々を送っていた。
もうすっかり、私の頭の中からは赤い服の少女のことなど消え去っていた。
そんなある日、私は友達の家へ行こうと家を出た。少しゆっくりしすぎたせいで約束の時間に遅れそうで慌てた私は、あの公園を通り抜けすれば近道になることに気付き、久しぶりに公園へと足を向けた。
公園の入り口に差し掛かり、私はふととても懐かしい思いに包まれた。
不思議と笑みがこぼれる。
「懐かしいな・・・。よく一人で遊んでたっけ・・・。」
そう独り言を言いながら公園内を歩いていた。
ブランコの前をさしかかったときだった。
キィ・・・、キィ・・・
と、ブランコの揺れる音が私の耳に飛び込んできた。
思わず足を止め、ゆっくりとブランコのほうへ視線を移した。
そこには、あの、赤い服を着た少女が、当時と変わらない幼い姿のままブランコに乗っていた。
(・・・うそ!!あの子は、私と同じ歳くらいだったはず・・・!!)
一気に少女の記憶が私の頭によみがえった。
当時の私は幼くて特に気にしていなかったのだが、少女はいつも”いつの間にか公園にいた”。
それがありえないことは、今の私なら分かる。
この公園はとても小さく、公園に入ってくる前に必ず気付くのだ。もちろん、出て行く時だって分かる。
それが、この少女に関しては全くなかった。
いつもいつの間にかそこにいて、いつの間にかいなくなるのだ。
少女は当時と同じようにうつむき加減でブランコに乗っている。
ドクン、ドクンと大きく心臓が音を立てていた。
逃げたい一心なのに、まるで金縛りにあったかのように身体が全く動かなかった。視線は少女の姿を捉えたままで、そこから視線をそらすこともできずにいた。
しばらくブランコを揺らしていた少女だったが、やがてブランコが止まり、少女がゆっくりと顔をあげはじめた。
(嫌だ・・・!!!見たくない!!)
私は視線をそらそうとしたが、やっぱり身体は動かなかった。目を閉じようともしてみたのだが、それすらも叶わなかった。
カタカタと身体が震えているのが分かった。目からは涙が出そうになっていた。
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