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それは子供ではなかった。
長い黒髪に、青白い顔。
目は眼球がなく空洞で真っ黒だった。その空洞の目からは赤い血のようなものが流れ出ている。
そして、大きな口をニィッと歪ませ笑っていた。
その顔が、私の顔の真横にあったのだ。
「ひっ・・・・・・!!」
それしか私の口からは出なかった。
私が自分の存在に気付いたことを察知したその女は突然
『あはははははははははは!!!』
と、実に楽しそうに笑い出した。
けれどもそれはすごく不気味な笑い声だった。
そして再び私の耳元へ口を近づけると
『ずっと・・・ずっと・・・このときを待っていたの・・・。あなたを・・・殺せる日を・・・。』
フフフと楽しそうに笑いながら女は言った。
その直後だった。
いつの間にか私の目の前まで来ていた赤い服の少女が私の手を思いっきり引っ張ったのだ。
思わずバランスを崩し、私は前のめりに倒れた。
そんな私を睨んだまま少女は見下ろし、おもむろに手を上げると、その手を私のほうへと振り下ろしてきた。。
びっくりして私は思わず目をつぶった。だが、その後衝撃とかはなく、少女が手を振り下ろした直後、一瞬で背後が軽くなったのが分かった。
「・・・え?」
何が起きたのか分からず、私は恐る恐る顔を上げた。
私の背後にはもう何もしがみついてはいなかった。
少女は私に背を向け立っている。
少女の視線の先を見ると、先ほど私にしがみついていた女の霊が壁のほうへ張り付いていた。
先ほど笑っていた顔をとは違い、今は怒りをあらわにしている。
黒い目は激しく歪み、口元も禍々しいほどに曲がっている。
『なぜ・・・なぜお前はいつも邪魔をする!!』
女の霊は私ではなく、少女へと怒鳴りつけている。
ここからでは少女の顔は見えない。
『消えろ、消えろ、消えろぉぉ・・・!!私の邪魔をするなぁぁ!!』
叫ぶその女の霊の声は先ほどとは違い、低く野太く、まるで男の人のような声になっていた。
表情も先ほどとは違い、顔全体が醜く激しく歪んでいる。
『・・・私は・・・、この子を守るの・・・。そう、約束したんだから・・・。』
少女が小さくそう言ったのが聞こえた。
その声の直後だった。少女が女の霊のところへと駆け出した。そして両手を女の胸へとあてる。
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