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息が、給湯室に響く。
「何を、してるん…ですか?」
「なんか伝わっちゃったかも」
「…何言って」
菜波がよじってその束縛から逃れようとすると、芳野の体が行く先を拒む。
「そんなガチガチに緊張されると、こっちまで緊張というか…するから、さ」
キッと睨みつけるが芳野はそのまま視線をそらさない。
恐くなって菜波の視線の方が先に宙を舞う。
コップを持つ手に響く心臓の音が、うるさく被さる。
波動が波となって揺れている。
「そんな、警戒、せんで」
芳野の声がかすれて、低く、小さく、直接脳に響く。
「して、ないです」
「ふうん」
じっと菜波を見る瞳がいつもと違う。少年ではない光がそこには灯っている。
「なあ」
返事が出来ずに下を向く。横顔に突き刺さるのが耐え切れず、目を閉じる。
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