最俺

大学卒業？気にするな。

ーとある屋敷にてー

大庭園の真ん中に聳え立つ四階建ての屋敷の一階廊下で、一人の少年と執事がカツカツと靴を鳴らしながら、歩を進める。

少年は真っ直ぐ書斎へ、召使は慌てたようにその少年を追いかけながら話し掛ける。

「お、お坊っちゃま！なぜ高等学校へ通われるのですか？！飛び級をして・・・もう大学を卒業なさり、勉強は充分優秀でございます！この屋敷に留まって頂いても、差し支えないはずでしょう・・・！」

少し悲しそうにそう言って食い止めようとする召使の言葉を聞き、少年も少し悲しそうな顔で立ち止って振り返る。

「ファル・・・俺だって自分一人で生きていかなきゃいけないでしょう。それに、本当の学年は高校一年。日本に行くんだったら、それで転入するのが妥当だと思うんです。卒業履歴は関係ありません。」

淡々と並べられた言葉に、執事･･･ファルは痛いところを突かれたように顔を歪めるも、まだ諦めないとでも言うかのように付きまとう。

そして、暫しの沈黙後、やっとの思いで理由思いついたのか顔を上げた。

「・・・でも！坊ちゃんは普通の人じゃないんですよ？これじゃあ以前と一緒「分かってます。」

そんなファルの言葉を、少年は鋭い声で遮った。