第一話 それは道草のように

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 明日香が引きつった顔をしているのには気づいたけどそんなことはお構いなしよ!  「思えば入学した時からそうだったわ・・・。周囲の男子共が鼻の下伸ばして私を見ている中で、ひとり、たったひとりだけ、あの男だけは私に見向きもしなかったわ!わざと目の前を横切ったときも声かけてこなかったし、不自然にアイツの近くでハンカチを落としてみても「あ、南条さん、ハンカチ落としたよ、はい」よ!「はい」じゃないってのよ!この私の所有物に触れることができたんだからもっと喜びなさいってのよ!」  「あのぉ、蓮華?何を急に怒り出したのか分かんないけど、もうすぐチャイムなっちゃうから…。聞こえてないな、こりゃ。じゃあ、先行くね~…」  「ああああ!何かよくわかんないけどアイツのことを思い出すとイライラしてくるわっ!」  興奮しすぎて息が上がってきているのが自分でもわかった。とりあえず、少しでも落ち着くために息を整える。  「すぅーーーはぁーーー…。ん?そっか、そうよ!ふふふ・・・。私は見た目も性格も完璧な美少女。当然、惚れない男なんていないはずよね。だったら、全然私になびかない男、加治屋草司。私の全力をもってアンタを私になびかせてあげるわ…」    七月のある日、何故か急に目標ができた。    私を道草のように、極当然にそこにあるように扱う加治屋草司。    私が完璧な女であることを証明するため、そしてアンタが普通の男子だってことを証明するために、アンタに私の魅力をバッチリ教えてあげる。  さぁ、私になびきなさいっ!加治屋草司!  ふふふ…。楽しみだわぁ…。 キーンコーンカー…  ぁ、授業始まっちゃった。
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