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レッスンが始まる。
歌の先生は、ピアノの先生よりも若干年をとった女の先生だ。
「先週はすごく良かったんですよね。
じゃあ今日はあなたの歌いたいものを練習しましょうか。」
先生はそう言ってにっこりと笑った。
比較的優しい先生ではあったが、まさか歌いたい歌を歌わせてくれるなんて思わなかった。
少女は飛び跳ねて喜びたいのを必死に抑えた。
この一週間の苦しみを一瞬で吹き飛ばしてくれる機会を、神様が与えてくれたんだと思った。
「何を歌いたいですか?」
「じゃあ、“Karma” を……」
少女は少し照れながら言った。
「あなた、この歌好きですものね。
それじゃあ先生は聴いてますから、最後まで歌ってみてください。」
先生はまたにっこりと笑った。
今日の先生は、少女にとっては天使様のように見えた。
そして、少女は息を深く吸い込み、何もかもを吐き出すように歌い始めた。
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