何もかも

12/19
前へ
/26ページ
次へ
「素晴らしいです。 あなたは優秀な生徒ですね。 先生は今の歌声、とても感動しましたよ。 ノートにもしっかり書いておきますからね。」 先生はパチパチと拍手をして少女にそう言った。 「あ、ありがとうございます。」 少女は自分の顔が赤みを帯びているであろうことに気づいて、さらに少し恥ずかしくなった。 でも、それ以上に、今までの人生で一番幸せを感じている自分もしっかり感じていた。 「今日のレッスンはこれで終わりにしましょう。 今夜はまた雨の予報が出ていますから。 おうちに帰ったらノートを忘れずにお母さんに見せるんですよ。」 「あ、はい。 ありがとうございました。」 本音を言えば、少女はまだ歌いたかった。 でも、このまま、満たされた気持ちのまま、また明日から頑張りたいと思った。 来週の歌のレッスンを楽しみに。 少女は、陽が落ちて暗くなった道を真っ直ぐ帰った。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加