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「座って」
そう促されて、新品のように綺麗すぎる茶色のテーブルを囲う4人分のイスのうち1つに、適当に座った。
小さなキッチンに冷蔵庫も角にぴったりはまるくらいの、小ささ。
あまり使われていなさそうなキッチンに玲央が立って、慣れない作業をしようと、している。
お茶ぐらいは出さなきゃ、とか思っているんだろうな。
気にしなくていいのに、なんて思いながらも、中々見れない玲央の姿を、大人しく観察。
やかんに水を入れて火をつけた後、小さな棚から何やら取り出せば。
物凄い量の黒い粉が、マグカップに投入、された。
……あぁ、玲央くん。
インスタントコーヒーを作ろうとしているんだろうけど君、何でもかんでも入れればいいってもんじゃないから。
それ飲むの、私だから、余計に恐ろしいんですけど。
「玲央くん、コーヒー作ろうとしているところ大変申し訳ないんですが。その粉の量だと水1リットルは必要、かと」
「………」
あーあ、そんなあからさまに悲しそうな顔しないでよ。
あるはずのない良心が痛むでしょうが。
「で、でもありがと!玲央のその気持ちだけですっごく嬉しいよ。あ、子猫ちゃんにご飯はあげたの?」
「……まだ」
「じゃぁ私なんかより子猫ちゃんにいつもあげてるもの、あげて?」
「ん」
ふぅ、何とか話はうまく逸らせたようだ。
キャットフードの袋をあけて、慣れた手つきで器に移す、玲央。
「この子を飼い始めてどのくらい?」
「5月の最初に、拾った」
「……捨てられてたってこと?」
「ん」
子猫の前に器を置き、悲しそうな瞳を向けながら、玲央は子猫の頭を。
そっと、撫でた。
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