99人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
「レイ」
「え?」
「うん!レイがいい。なんか一番ピンとくる」
「……レイ」
ふと浮かび上がった、普通と言えば普通の名前を、玲央は噛みしめるように口にする、と。
レイと呼ばれた子猫は、「にゃぁ」と可愛らしく鳴いた。
「気に入ったみたい!よし、これからお前はレイね」
レイを抱え上げて頭を撫でると、ペロッと私の頬を舐めた。
「レイ。名前呼ぶと、嬉しい」
「そう?」
「名前を、忘れられると、悲しい」
意味深な発言をする玲央を、思わず見上げるけど、優しく微笑んでいる、だけ。
名前は、ただの呼び名なのに、名前をつけると、安心してしまう。
この世に存在している証、だから。
「だけど、名前にとらわれすぎちゃダメだよ。名前は名前、ただの呼び名。それに安心してはダメ」
名前を大切にしすぎると、存在の意味が見えなくなってしまう。
「ん。レイの存在、大切」
私の想いが上手く伝わったのか、玲央もしっかり頷いてくれた。
「悠、歌って?」
レイに猫じゃらしや小物を使って一緒に遊んでいたら。
その様子をくすくす笑いながら見ていた玲央が、呟いた。
そんな玲央に、微笑んで見せて。
オレンジの歌を、歌おう。
.
最初のコメントを投稿しよう!