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2人でバス停まで歩きながら、レイの話をして。
「玲央、またね」
「ん。気を付けて」
バスが来たから、乗る間際に手を振って、私たちは別れた。
バスの窓に映る、夜空と月に照らされる、海。
今宵の月は細い、月だな。
夜空にすがりつくような、消え入りそうな、月。
玲央と初めて会った時、この人には月が似合う、なんて思ったことを思い出した。
でも、今、私の目の前に映る月は、玲央じゃなく、まるで今の私のようだ、と。
思わずには、いられなかった。
寝ている5時間の中で見た、淡い、夢。
私は寝ることが好きじゃなくて、いつも寝ている玲央を見ると、疑問に思う。
怖い夢や嫌な夢を、見たりしないのかな、って。
あの記憶、幼いころの私のキオクをカギのなる箱にしまったのは、いつだっけ?
カギのなる箱にしまったのは、なんだっけ?
それさえも思い出せない今、私はさびつく箱を見つけた夢、を。
浅い眠りの中で、見た。
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