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それから俺の想いは伝えられないまま時は過ぎ、冬が近付いて来た。
群青色に染まってく空の下、仕事帰りの人たちはみんなコートの襟を立てて足早に帰宅する中。
俺は1人、ゆっくりと帰路を歩いていた。
イヤホンから流れるのは、彼女が好きだと言っていた音楽で、昨日レンタルショップで借りてすぐにiPodに移したやつ。
少し、彼女に近付ける気がして。
今まで聴いたこともない音楽なのに、今まで聴いていたみたいにお気に入り。
彼女と歩いているつもりで浮かれちゃって、なんだかバカみたいだよな。
それでも、少しでも彼女に近付きたいんだ。
家に帰って携帯を開いてみると、青田からメールが入っていた。
とは言っても、こいつからのメールはほぼ毎日来る。
くだらないことだったり、部活や進路の相談だったり、内容はさまざま。
青田が寄せる俺への想いには、気付いているけど、気付いていないふり。
俺はただの友達でいたいから、それ以上にはなりたくない。
だからたまに、青田に会いたくないときがある。
だけど友達としては会いたい。
青田の気持ちは知ってるし、俺の気持ちも知ってる。
どっちを大切にすればいいんだろう。
……あぁ、そうか。
もしかしたら彼女も、俺に対してはこんな気持ちを持っているのかもしれない。
こんなに苦しいのに、彼女を想うことをやめられない。
いっそのこと、嫌いになれたらいいのに。
でもそれは、絶対に無理って分かっているし、嫌いになれないから、もっと好きになるんだろう。
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