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「見て見て!愛花が好きそうなキモ可愛いキーホルダー!」
駅前に並んでいる店の中にあるキーホルダーを窓越しに指さしながら、はしゃいでいる彼女。
そのまま彼女は、店内に入って行った。
視線を自分の左手に移すと、意味もないような掌が、俺を静かに責め立てた。
1つ小さくため息を吐いて、空を見上げる。
水色、橙色、灰色、たくさんの空を、彼女が好きなまま見てきた。
無意識に淡い淡い水色の世界を泳いでいた期待のせいか、視界が霞んで見える。
瞬きが涙を隠し、目を逸らし、震える手を袖へ潜らせた。
俺のこと、ちょっとでも知ってて。
好きで、ごめん。
彼女と青田の関係を壊したいわけじゃないけど、邪魔しようとしてごめんな。
ごめん、好きだよ。
袖に隠した掌をぎゅっと強く握りしめ、心の中で窓の反対側にいる彼女を。
そっと、想った。
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