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彼女と出会ってから1年が経ち、俺たちは高校2年になった。
そしてちょうど1年前に彼女が転校してきた時期と同じころにやってきたのが、月次空雅。
容姿はもちろん、その目立つ性格から俺はすぐに嫌な予感がした。
そしてそれは見事に的中し、月次は彼女の隣を歩くようになっていて。
内心焦りながらも、表面上は平静を装うのに精一杯。
それでも、彼女と月次は特別、そんな関係ではないということが次第に分かってきた。
月次が本当に想っている人は、青田、だということも。
それからは少し安心して、月次とも普通に喋るようにまではなった。
でも、ある時。
月次がクラス全員の前で、彼女にとってタブーなことを堂々と聞いてしまったことをきっかけに。
俺は、どうやって彼女と接したらいいのか、一時分からなくなってしまう。
彼女本人の口から聞いたことはなかったけど、あの噂については俺も気になっては、いた。
でも、事実かどうかを確かめるよりも前に、彼女には恋愛をする意思がない。
つまり、俺の想いは伝える前から、結果がはっきりと見えてしまったのだ。
そんな苦しみと同時に、彼女は誰のものにもならない、そう分かった時にはひどく安心している自分もいた。
「今」の彼女には確かに恋愛をする気はないだろう。
その理由が過去にあるのか、俺には何も分からないけれど、自分の想いを伝えられないまま見ているだけなんて、そんなのは絶対に嫌だ。
彼女のすべてが知りたい、彼女のすべてを俺のものにしたい。
蕾を花にするのは育て方で違ってくるけど、まず種を植えなきゃ咲く花も咲かないから。
だから俺は、彼女に想いを伝える。
そう、決意をして屋根の上で微笑んでいる青空を見上げた。
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