3人が本棚に入れています
本棚に追加
剣を交えてどれほどの時間が経っただろうか。狂華は唸る。最強だと言われても自分自身では認めなかったが、自身に拮抗する実力者に逢うことがなかったことも事実だった。だが今、それを覆す者がいる。
ギギンッ!
狂華の左右に薙いだ二刀が敵の剣に阻まれた。
彼女を最強だと信じた者達の幻想を打ち崩そうとする物がいる。
「ゼァッ!」
「っ!」
振り下ろされた剣を、本能的に横へ跳んで回避する。
狂華達が皇国を救ってくれる。そう信じている者達の想いを滅ぼさんとする者がいる。
(こんなところで負けてられない……勝たなきゃ……お母さんが、レイが信じてくれたんだから、できる!)
いくつもの魔法を打ち合い、何合もの剣戟を交わす。狂華の想いが力となり、押され気味だった戦いの天秤がごくわずかではあるが傾きを変えていく。
「むっ……」
敵の顔に険しいものが映る。
(勝たなきゃ……!)
「あああああああああああああっっ!!」
魔法は使わない。代わりに使わせる暇を与えない。二刀による神速の剣撃が敵に防戦を押しつけていく。軽い天秤にサラサラと砂が積もり、重さを書き換えて行くようにその光景はつい数秒前までとは変わっていた。
狂華を信じる者達の想い。それに応えようとする狂華の心。それらが合わさり、さらに運まで転がり込んできた。
敵が足元の瓦礫に足を引っかけ、体勢を崩したのだ。ほんのわずかな、百分の一秒にも満たないような短い隙。それが最強と謳われる者達の戦いにおいては命取りとなる。
「っ! 【三つ巴】!!」
三つの白く濁った半透明の木の幹が現れ、あっという間に左右の腕を縛り、両足を纏めて戒める。狂華の得意とする神級魔法だが、この敵相手に長くは持たない。だが、それでいい。
振り上げられた二刀が閃き、拘束されている敵の腹に突き刺さった。
「ぐ、お……!」
「これで、終わり!」
素早く逆手に持ち替え、右の刀を左手で、左の刀を右手で掴み、左右に斬り開いた。上半身と下半身が分かれ、拘束魔法が消えて敵は後ろに倒れていく。背中から床に落下し、衝撃で手から剣が落ちると同時に胸から上が下から離れる。
最初のコメントを投稿しよう!