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「雪野ー!!」
少年の悲痛な叫びが響き渡る。無意識のうちに伸ばされた手は狂華には届かない。そして、それはついに落下した。
ただし。
狂華にではなく、敵の真上に。土埃が舞い上がり前方の視界がゼロになる。
「あだっ!?」
素っ頓狂な声がした。だがそれはこの場にいる三人のものではない。若い男の声には違いないが少年とは逆の、土埃の方からした上、彼よりやや低いトーンの悲鳴だったのだ。
狂華ではなく敵に落下したこと、いつまでも自分に攻撃が来ないことに呆然としていると、後ろからやって来た少年は敵から庇うように狂華を抱きしめ、土埃に対して武器を構える。
「痛つつ……なんでいっつも着地に失敗すんだよ」
また声がする。
狂華と敵の戦闘で崩れた壁の隙間から風が舞い込み、そのヴェールを押し払うと、そこにはほとんど花弁と化して倒れている敵がいた。
そして、その上には固く撥ねた碧い髪を揺らし、しかめっ面をしながら尻をさする少年が。
想定外の乱入者。いつの間にか終わった決戦。
「「へ……?」」
狂華と、彼女を抱きしめる少年は呆然とする他になす術はないのであった。
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