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学ブンと連れだって、ファーストフード店を出る。 残暑厳しい9月。 ムワッとした空気にうんざりしながら、俺たちはセミが鳴く並木の歩道を目当ての場所に向かって歩いた。 ファーストフード店から歩くこと10分程度。 メインストリートから少し逸れたオフィス街に、6階建ての真新しいビルが見えた。 自動ドアを通り警備のおじちゃんに挨拶して、エレベーターのボタンを押す。 チンっ 機械音とともに開いた、硬質な銀色の扉の中に、制服姿の俺と学ブンは当たり前のように乗り込んだ。 エレベーターがゆっくり上昇していく。 このビルの3階から6階に俺たちが所属するasakura model agency の事務所がある。 ちなみに1階は飲食店、2階にはスポーツジムが入っていて、どちらも事務所のモデルたちの(いこ)いの場となっている。 まあ俺たち学生にはちょっと割高だからたまにしか使わないけど。 「学ブン、次のスケジュール決まってんの?」 「ん?まあ、J.m.の撮りがあるのは聞いてるよ。 あと、オーディションがどうのって益子(ましこ)さんが言ってたな」
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