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ビルの五階でエレベーターを降りる。 エレベーターホールの先には白い壁の廊下が伸びていて、会議室、応接室、資料室、事務室等のドアが並んでいる。 俺たちは一番手前にある、事務室のドアをノックした。 「!」 ドアを開けた途端、そこに人が立っているのに気づいて、驚いて立ちすくんだ。 相手も同様にびっくりしたように、俺たちを見てる。 さらさらの黒い髪。高い身長。手足の長い伸びやかな体。 多分、モデルだろうけど見慣れない顔だ。 強い意思を持ったように輝く、黒曜石(こくようせき)みたいな目が印象的で、俺はなぜかボンヤリと彼女に見とれた。 「チカ?邪魔になってるぞ」 学ブンに襟首(えりくび)を引っ張られて、ハッとする。 「あ、すみません」 脇に()けて道を作ると、 「ごめんなさい。ありがとう」 彼女はにこりと俺たちに笑いかけて、 「失礼します」 と、部屋の中に一礼して去っていった。
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