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「あら、チカちゃん、学くん来てたの?」 「チカちゃん久しぶりー。あはは。学は相変わらず蓮くん好きだねー」 事務員やモデルのお姉さん達が、道を開け優しく招き入れてくれる。 「(れん)、お前はほんと可愛いな!」 学ブンは明らかに迷惑そうな蓮を抱っこして、頬をすりすり合わせ始めた。 「まなう、やー!」 拒否した蓮が、小さい手で学ブンの顔を押しやる。 「えーちょっとくらいいいじゃん。蓮のケチー」 バタバタする蓮を、学ブンが意地悪に笑いながら抱っこで拘束(こうそく)していると 「こら!東條くん! 蓮くんから離れなさい!」 カツカツとパンプスを鳴らして近づいてきた益子さんが、学ブンの襟首(えりくび)を後ろから引っ張った。 ぐんっと学ブンの体が後ろに(かし)ぐ。 「何?益子(ましこ)さん。 まさかのヤキモチ?」 反り返ったまま学ブンがニヤリと笑うと、益子さんは怒りからか、かあぁっと顔を赤らめて眉をつり上げた。 「こっ子供が大人をからかわないでっ」 「あれ?なに動揺してるの? 益子さんってほんとウブだよね」 恐れを知らない学ブンがさらに益子さんをからかう。 「…………いい加減にして」 益子さんはクイッとカマキリ眼鏡のブリッジを中指で上げて、絶対零度の視線を学ブンに向けると、彼の腕から蓮を取り上げた。
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