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詩緒さんは俺にとって、憧れの女性だ。 まだ小学生の頃、母親が買ってくるファッション雑誌の表紙を飾っていた彼女に俺は初恋みたいな感情を抱いた。 そこからモデルって職業に興味を持って、母親の後押しもあってモデルオーディションに応募した。 そのオーディションは残念ながら最終選考で落とされてしまったけど、(余談だが合格したのは学ブンだった)その時偶然浅倉社長の目にとまって、事務所にスカウトされた。 当初は詩緒さんと同じ事務所に入れるなんて、超ラッキーだと興奮したものだけど、 実際に彼女を近くで見る機会に恵まれると、半端ない緊張感で話すどころか動くことすらままならなくなる。 なのでこの事務所に入って5年、俺はまともに彼女と話をしたことはなかった。 「ねぇ、ママ。 きょうはいっしょにかえれる? ぼくねー、おらむいすがたべたいの」 詩緒さんにくっついて蓮が甘える。 親子とは言え羨ましい。 しかし「おらむいす」ってなんだろう? 新しいデザートかな?
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