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俺が小学生の頃。 親父が不倫した。 相手は同じ会社の若い女で、飲み会の流れで手を出したのが始まりだった。 よくあるありふれた話だ。 だが、どんなにありふれてようが当事者(とうじしゃ)はのんきになんて構えてはいられない。 まず、お約束だが母親が発狂した。 仕事だと言い訳して、帰りの遅い父親に鬼のような電話とメール。 毎日のポケットチェック、財布チェックに携帯チェック。 怪しいものが一つでも見つかれば、泣き叫んで物を投げ続ける。 「お父さんはひどい人なのよ! あんたはあんな風になっちゃダメよ!」 毎日のように泣き崩れ憔悴(しょうすい)した母親を心配しながらも、度重なる両親の喧嘩や、呪いのように繰り返される恨み(ぶし)に、正直うんざりしてた。
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